似太郎

終電車の似太郎のレビュー・感想・評価

終電車(1980年製作の映画)
5.0
【フランス人的性格🍷】

💃トリュフォー版『天井桟敷の人々』meets『生きるべきか死ぬべきか』といった趣向の、演劇俳優たちの恋のいざこざをヒューマンなタッチで描いた大人のためのファンタジー。

時は第二次世界大戦。✈️ナチス占領下のパリが舞台なのだが、安直な反戦映画にはせずあくまで【ラブロマンス】という体裁を守っている辺りが如何にもトリュフォーらしいアプローチ。

かつてトリュフォーがヌーヴェルヴァーグ時代に批判したルネ・クレマンやクロード・オータン=ララといった「保守的なフランス映画の伝統」をたっぷり感じさせる皮肉な結末にはなっているが、敢えて伝統的なフランスらしさに回帰したという意味でもこの監督の中で重要作と言えるのかも知れない。🤔

🎥映画内の舞台=虚構という世界を往来する自由闊達な雰囲気はトリュフォーが敬愛するジャン・ルノワールに近いワチャワチャしたマジック・リアリズム群像劇みたいな要素が強く「保守」と「革新」がまるでブレンド・コーヒーの如く入り混じった味わいのあるコク深き逸品。

主演のジェラール・ドパルデューは典型的なフランス人的マスクで心やさしい。カトリーヌ・ドヌーヴは気品溢れる演劇俳優。皆が皆、活き活きと戦争という不幸な時代をどこまでも「ラブリー」に生きようとする意志が感じられる。🇫🇷おフランスらしさ、ここに極まる。🍾

のちにタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』が「反戦映画を装った劇中劇」という本作の手法をまんま模倣しているが、この映画に比べると精神年齢がまるでガキ。「人生は、終わりなき舞台」=嘘をつく、演じることに拘るフランス人的性格を本作で見抜いた私であった…。🤭クスクスッ
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