昼行灯

追悼のざわめきの昼行灯のレビュー・感想・評価

追悼のざわめき(1988年製作の映画)
3.5
セックス出来なくてもがく苦しさ、セックスしても残る虚しさ。それらが破壊衝動に繋がってしまうのは性に対する後ろめたさ故に性の現実をなかったことにしたいからなのかな。男性の性衝動はその人の特性として描かれているのに対して、女性(小人症の人)のそれが小人症という属性に由来する抑圧として動機づけられてるのがちょっとなあという感じでした。露悪的な表現には1本通った思想がないと単なる欲望のむき出しで下品なだけだよなあとも思うし。で、なんなのこれは?っていう

とはいえ、その人の描かれ方は兄妹の近親相姦(多分グロの中の崇高なものという意図で詩的に撮られている)よりも一層美しかった。終盤の望遠レンズで撮られた女学生軍団に逃げ惑われる彼女のぽつねんとした足取りや、ラストの通天閣で静かに下界を眺める彼女の佇まいは、もはやこの世とは断絶されたところに存在している妖精や霊のようにも思えた。屋上に火をつけたり、胎児を引きずり出して引きちぎったり、すごいことをしてるのに全然台詞を喋らないところもまるで現実と空想のあわいに生きているかのような雰囲気がある。小人症に由来する差別に対しても全く文句を言わず、1人で自分なりに世界を終わらせたところにまっすぐな美しい孤独があるなと。
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