朝田

復讐 THE REVENGE 消えない傷痕の朝田のレビュー・感想・評価

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前作「運命の訪問者」は素晴らしかったが、続編のこちらは90年代の黒沢作品としては正直やや物足りない。というのも、割りとvシネマ、ノワールの枠組みを守った映画になっているから。勿論ロケーションの異様さや空間の不穏な捉え方など黒沢清の作家性は滲み出ている。しかし、「蜘蛛の瞳」や「蛇の道」のようなノワールというジャンルを解体、再構築したような実験性はないし、「運命の訪問者」のような目を見張るような銃撃戦や編集のタイトさはない。作品としては然程盛り上がれはしなかったが、要所要所で奇妙な魅力があるのも事実。まず黒沢清というよりも、初期北野映画的なムードが前傾化しているのは面白い。哀川翔と菅田俊が虚無な精神状態で子どもじみた遊びにふける様は「ソナチネ」、「3-4x10月」におけるたけしの姿そのもの。ただ北野武作品における「遊び」が、死を予感させながらもどこかそこに二度と戻らない時間に思いを馳せる「切なさ」を感じさせるものであるのと対照的に、黒沢清が捉える「遊び」は「遊び」でしかなくひたすら虚無感へ浸らせる。そこの違いはかなり興味深く見た。また、前半における長回しは黒沢作品の中でも屈指の凄まじさ。車を真っ正面から永遠とカメラが捉え続け、菅田俊が喋りまくる。しかも本当に車が走っているだけで特に見せ場になるわけでもない。ひたすら長回しをした挙げ句、道に迷っただけ。という流れはどこにも行き場がない男たちを描いたこの物語を象徴するようなシーンで強く記憶に焼き付く。という訳で作品としては物足りないが美点はいくつもあり、掴みきれない感じが魅力的な映画ではあった。
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