なべ

トップガンのなべのレビュー・感想・評価

トップガン(1986年製作の映画)
3.0
 いい意味でも悪い意味でもトム・クルーズのアイドル映画。世間で評判になってる映画しか観にいかず、朝礼の3分スピーチで「えー、昨日はトップガンを観てきましたぁ」とやっちゃう、映画偏差値の低い人向けにつくられたようなクソわかりやすい作品。たぶんキムタクのドラマはこのあたりをベンチマークしてるんじゃないかな。
 ジョン・ヒューズの描く青春映画は大好きなんだけど(今見てもキュンとなる)、こういうバカっぽいマッチョ映画はそれほどでもなく、大ヒットしたのに円盤(LD・DVD・Blu-ray)は買ったことがない。
 そんなわけで、まったく観るつもりはなかったのだが、「マーヴェリック」で盛りあがる周囲(知人にリピーターが出た!)につられて、つい魔がさしてしまった。
 ストーリーはほぼ記憶通り。自信をもってはにかむトムクルーズや、ちょっとババくさいケリー・マクギリス(もっと上手な女優さんなのになんかヘタ)をはじめ、生涯脇役を貫く覚悟が見えるアンソニー・エドワーズ(ERのグリーン先生!)に、口元がキモいヴァル・キルマー、端役でも無性にかわいいメグ・ライアンと、36年経っても出演陣の印象はあの頃のまま(そりゃそうだ)。
 それでもオープニングの朝焼けのなか、カタパルトの隙間から噴き出す蒸気や、アフターバーナーの輝き、アレスターがワイヤーに引っかかる瞬間など、発着艦の目まぐるしいオペレーションが美しくて、ケニー・ロギンスの曲が始まるまでうっとり見惚れてしまった。アイドル映画でもちゃんとつくり込まれてることに感動。きっと続編でも同じ演出をしてそう。
 続く空中戦も素晴らしい。戦闘機のマッハ感をドッヒューーーンと出しつつ、寄ったり引いたりの視点移動でハラハラが止まらない。トムクルーズではなくトムキャットが主役であるって目線なら、本作は最高の戦闘機映画なのかも。クライマックスのミグとの戦闘ではミサイル命中のシーンが全部別カットでガッカリしたが、続編ではきっとミサイルの軌跡の先で分解する敵機が描かれてるんだろうな。
 ちなみにトップガンは米海軍のエリート集団。みんな大卒で、空軍士官でなければなれない。当然各自個室が与えられてるからみんなでシャワーなんてありえない。あんなハイスクールのフットボール部みたいな現実はないからね。あくまで青春映画としての架空の世界だから。
 何が嫌いってアイドル映画なのにあの汚いラブシーンはなんだ⁉︎ シルエットなのに監督の舌への異様なフェティシズムがわかるキモチ悪さ。あんたの性癖は映像化してくれなくていいよ。華麗なる賭けでマックィーンとフェイ・ダナウェイが絡ませる舌はめっちゃんこエロくてカッコいいけど、トップガンの舌はただただ汚いだけ。恥ずかしいからやめて!ってなる。シルエットのラブシーンは続編でもやってそうだが、舌へのこだわりはどうなのだろう。
 裸のビーチバレーや戦闘機を背景にバイクをカッ飛ばすアイドル映画ならではの(別になくてもいい)サービスカットは続編でもやっとるだろうなw
 ストーリーは特に書くことはないんだけど、しいていうなら、バディの死によって再起不能に陥った若き天才パイロットが、実戦の中で天性の勘と技術とリーダーシップが蘇るという、これ以上のアイドル映画の脚本はないってくらい定番の話。深みは特にない。
 ここら辺がきっと続編では新しい何かに変わってるんだろうが、特に楽しみにならないんだよなあ。かつてのアイドル映画が時を経て、老いと死生観と防空の意味について深く熟慮する映画になっているのなら観たいけど、おそらく本作をなぞっただけのアイドル映画Ver.2なのだろう。
 戦闘機がF-14からF/A-18に代わったのはとてもいいと思う。昔、ハマったフライトシミュレータで散々飛ばしたホーネットには思い入れがある(味方を撃ち落として檻に入れられたことも!)。トムキャットは見た目が鈍重だから、ホーネットのシャープなシルエットがよりスピード感のある空中戦に仕上がってそうだ。
 でもやっぱり遠慮しとく。アイドル映画には興味ないもん。どうせ父親の死の秘密も明らかになってないんでしょ?
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