うにたべたい

新幹線大爆破のうにたべたいのレビュー・感想・評価

新幹線大爆破(1975年製作の映画)
4.9
びっくりするほど素晴らしい名作でした。
平日夜に30分だけ摘んで観るつもりがやめ時が見つからず、あれよあれよという間に2時間半、結局全部見てしまいました。
この頃の邦画には珍しいパニックムービーで、減速すると爆発する爆弾が取り付けられた新幹線に閉じ込められた乗客・乗員、犯人を追い詰める警察、乗客の命を守るために奔走する国鉄職員、そして爆弾をしかけ金品を要求する犯人一味それぞれにカメラがあたる構成となっています。

153分という長尺ですが、次から次へと展開が進み、逆に尺が足りないくらいに感じます。
乗客にも、ビジネス上の理由でどうしても下車する必要がある男、テレビマン、臨月を迎えた妊婦、護送中の犯人などなど、それぞれにドラマがあり、ラジオから入るニュースに絶望し、騒ぎ出し、神にすがり、気が狂う者も出る始末。
小さな手がかりから犯人の目星をつける警察の対応は見事ですが、全国の警察官を制限時間付きで動かす上で連携ミスが起きたり、早まった行動をしてしまうものが現れます。
犯人逮捕を優先し、人命救助を後回しにした結果、迂闊な結果にもなる警察に苛立つ国鉄は運転手と連携を取り独自に爆弾を処理する方法を模索する。
そして犯人、グループ犯なのですが、彼らが犯行に踏み切った理由、経緯についても丁寧に描いており、無傷で手に入れるはずの金を手にするため悲しい代償を払う結果となってしまう。
そうこうしているうちに走る電車、迫るタイムリミット、新幹線に閉じ込められた人々の命は助かるのか!?

臨場感抜群で、見終わった頃にはぐったりしてしまいました。
新幹線の特撮も凄い迫力です。
一部はもちろん撮影用の模型で撮られていますが、素人目に模型のちゃちさみたいなものを感じられなかったです。
ただ、撮影時には国鉄の積極的な協力を得られなかったそうで、(そりゃあそうですね、新幹線に爆弾を仕掛けるような縁起でもない内容なので) 実際と異なる部分があるそうです。
新幹線の仕組みや、管制センターに詳しい方が見ると色々気になってしまうようです。
私は全く詳しくないので、そういった点に気づきませんでした。
ラストは結構、しょんぼりです。
正義とは何か、どこにあるのか、考えさせられる終わりになっています。

なお、5億を超える制作費を費やして作られた超大作ですが、国内セールスは奮わなかったようです。
映画評論家の評価は高かったものの、国鉄の怒りを買ってしまいろくに宣伝もできず結果は惨敗。
それ故か、実に素晴らしい内容で、キャストも豪華、高倉健、千葉真一、田中邦衛と揃えていながらも、悲しいことに一般認知度は低いイメージがあります。
本作は海外では有名らしいんですけどね、"スピード"や"ヒート"など、本作に影響を受けて作られた映画は数しれず。
映画自体も、海外セールスで黒字に転じたそうです。

二回目ですが、本当に素晴らしい作品でした。
未視聴の方は、是非!