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ブラッド・ダイヤモンドのmickeyのレビュー・感想・評価

ブラッド・ダイヤモンド(2006年製作の映画)
4.8
指輪を欲しがる彼女に見せたい映画No.1!

本作は、紛争ダイヤによって人生が翻弄される男、密売人、ジャーナリストの話です。
こう書くと難しく感じるかもしれませんが、この作品が素晴らしいのは“巨大ピンク・ダイヤの争奪戦”という話を軸に、全てを奪われた男が家族を取り戻す話、元傭兵の葛藤と再生、ダイヤ密売と大企業の暗躍、それを暴こうとするジャーナリスト、政府軍とゲリラの対立と虐殺、少年兵や難民問題・・・、こんなに多くの要素を詰め込みながら物語が破綻せず見応えある人間ドラマが描かれ、社会的メッセージと娯楽性を高いレベルで両立させていること!
上映時間140分ですが、全く気にならずに惹き込まれました。

紛争ダイヤ問題はシエラレオネで現実に起きている話で、作中のヴァン・デ・カープ社は「ダイヤモンドは永遠の輝き」で有名なデビアス社がモデルのようです。こういう分かりやすいキャッチフレーズを使った宣伝でブランド力を上げてきたんですね。
少し調べてみるとダイヤ業界はユダヤ系が大半らしく、ユダヤ資本のハリウッドで紛争ダイヤの題材を扱うのは、タブー中のタブーなのだとか。

本作のレオナルド・ディカプリオは、キャリア中期の代表作と言えるほどの演技だし、アフリカ人の怒りと気高さを体現できるジャイモン・フンスー、知的な女性を演じさせたら彼女しかいないジェニファー・コネリー、それぞれのアンサンブルも素晴らしいです。
ゲリラや内戦、少年兵の描写に関しても現地でリサーチを行って再現しているらしく(音声解説より)、作品の完成度の割にあまり話題にされないのが残念です。

ダイヤ紛争の問題は難しくなり過ぎず、少年兵や内戦の悲惨さも重くなり過ぎないギリギリのライン。
もちろんもっと過激な作品はいくつもあるし、物足りなさを感じる人もいると思います。しかし本作に関しては、紛争ダイヤ問題を世界に広く知ってもらう側面があるわけで、むしろ商業的制約の中で真実を描き切ったことに大きな価値があると思います。
ラストシーンも一見ハッピーエンドに見えますが、先進国と大企業が招いた紛争ダイヤによりアフリカが血に染まっている現実を考えると、彼があの場所に迎えられる皮肉が際立ちます。

また、紛争ダイヤを防ぐ「キンバリー・プロセス認証制度」が採択されたという紹介がされます(消費者は紛争ダイヤに関わっていないこちらを購入しましょうね的な)。
これ、特典映像で「キンバリー・プロセスは問題ないのか?実際に紛争ダイヤを持ち込んでみた」ドキュメンタリーが収録されていました。
で、この制度も穴だらけっていうね。。。

【結論】
ダイヤモンドを買うのはやめよう

鑑賞後に、今まで知らなかった世界を知って少し賢くなった気になれるし、先進国の一消費者として考えさせられる作品です。
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