TnT

クラバートのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

クラバート(1977年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 カレル・ゼマンによる切り絵によるアニメーション。所々実写が合成で入ったりと(運ぶ荷物が歩き出す実写合成は「ファンタジア」っぽかった)、緩やかに他の表現技法も取り入れている(実写とアニメを合体させてきたカレル・ゼマン技量が窺える)。原作はドイツの児童文学、そしてその元となったソルビア(チェコも含まれる)の民話に基づく。

 切り絵アニメーションといえばノルシュテインあたりを思わせる作風であるが、ノルシュテインがその中でも奥行きに拘っていたことがよくわかる。今作はそれに比べると平面的で、ノルシュテインが表現手段としてアニメを選択したかのように思わせる技量とは違い、絵本の世界が動きを与えられたかのような作りが今作だ。ゲームの「ペーパーマリオ」に近く、平面的なのだが、立体的になった鳥の翼はあくまで紙のように薄く、絵画や絵本が動き出すという、現実からフィクションへのワクワクが表されているように思う。

 自由を謳歌していた少年が、話す鳥に連れられるがままに(ここ「君たちはどう生きるか」かと思った。でも古今東西鳥が話して誘うみたいな話は多いかも、ヨーロッパが特に多いか?)二度と出れない悪魔のいる水車に入ってしまう。飯には困らないが、労働を強いられる。試験で”親方”(水車の主)と勝負し負けると、負けた子供は死に、新人が再び招かれる。児童書なのに、ブラック企業への注意喚起ぽすぎるなぁと思ってしまった笑。現に前に長くいたバイト先が、新人が1年と持たずバイトの回転率が高く、給料こそいいが仕事の量が凄まじかった。自由はいいよ、でも主体性なく生きると流されるままに使い潰されるという、真っ当な教訓を今作は説いていた(もう少し早くに見ておけば…)。

 それを打破するのが「愛ほど強い魔力はない」という言葉であるのは、児童文学らしい。愛に絆され、水車を脱走しまくり非行しまくりな主人公の根性もなかなかなもので好き。子供、非行してなんぼと思うこの頃。

 原作のクラバートが「千と千尋」の元となったと聞いて、なるほど!と思った。
TnT

TnT