Rei

クラバートのReiのレビュー・感想・評価

クラバート(1977年製作の映画)
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チェコのウラジッツ地方の伝説をもとにした児童文学が原案であり、手塚治虫、宮崎駿が影響を受けていると公言している知る人ぞ知る作品。
魔法使いの親方にこき使われている少年クラバートがある少女と恋に落ちたことをきっかけに「自由」と「愛」という感情に目覚め、親方に立ち向かうというストーリー。
まずこの映画は決して子供向けの作品とは言いがたい。もちろん子供が見たら害になるようなストーリーではないのだが、人によっては恐怖を感じたり、ひどい場合はトラウマになってしまうような作品でもあると思う。
常にどこか不穏さを孕む作画、児童文学とはとても思えないほどに、あっさりと描かれる人間の死、赤と青の激しい光の点滅、不気味な音楽といったように、いわゆる日本の児童向けアニメにはないような表現が満載なのだ。
しかしながら、それに負けずに美しい描写がたくさんあるのも特徴だ。中でもクラバートと少女との純粋な恋愛の描写はみていてほんとうに心が洗われる。
親方からの監視から逃れるために魔法で変身して、魚になった二人のキスシーンからのクラバートの「ぼくは魔法が少しうまくなった」と言う台詞の流れが大好きだ。他にもクラバートの台詞は詩的でかっこいい・・となって自分もそんな台詞が言える器の男になりたいと思った(笑)
また個人的に魔法使いの親方はヒトラーのような独裁者のメタファーなのではないかと感じた。独裁者には憎くどれだけ反抗したくても逆らうことは出来ない。仲間が殺されているのをクラバートたちがただ見ているしかないという場面はそんな独裁者の力の象徴であると思う。
そんな独裁者である親方が恐れたのが「愛」の力であり、その力が物語をハッピーエンドへと導く。そこには作者のどのような悪に対しても愛の力が勝る世界であってほしいという願いが込められていると思う。
大学の授業で半ば強制的に見た作品だったが、非常に見応えがあり考えさせられる映画だった。
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