Mayuzumi

ザ・ドライバーのMayuzumiのレビュー・感想・評価

ザ・ドライバー(1978年製作の映画)
4.0
「知らんのか。お前の過去はもう調べ済みだ。
 怪しい点がある。ゲイってだけじゃない。ワイロの前科もあるようだ」
 というのが、ブルース・ダーンの部下に対する見識の全貌である。
 このモジャモジャ頭の刑事というのが、パッと見は、白骨化寸前に一命を取り留めたブルドッグが調子付いている、といった趣なのだが、面差しとは裏腹に案外声が高いのであって、その絶妙にチャーミングな調子で無口な走屋ライアン・オニールと、正体不明の女イザベル・アジャーニをしつこく追い詰める。しかしオニールもオニールで、兵隊蟻に瞼を咬まれた偽ジェームス・ボンドみたいな哀愁を顔一面に漂わせていながら、声が思いの外高いので、どことなく顔と声にギャップのある二人の宿命の決闘といったような、おもしろい様相を呈してくる。尋問中のコーヒーバトルは必見である。又、アジャーニを尋問するのに夜遅くホテルに押し入り、証拠写真ピラピラしまくるシーンも見逃せない。列車の個室 便所にいる客に鞄をチェックさせろといって出させ、違うと見るやすかさず蹴り返すあたりにも彼の人柄が偲ばれる。
 導入のカーチェイス・シーンを、『トランスポーター』や『ドライヴ』などと比較して論じれば、走屋映画史の善き入門書となるであろう。
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