シズヲ

ザ・ドライバーのシズヲのレビュー・感想・評価

ザ・ドライバー(1978年製作の映画)
4.1
80年代手前のハリウッドをぬらりと駆け抜けたノワール×カーアクション。とにかく余計なことは語らない。台詞や描写などの贅肉を徹底的に削ぎ落とし、淡々と事を運ぶように映画は進む。そしてクールな運び屋と横暴な警官の“ゲーム”じみた対立構図が物語の骨子を作り出す。無駄のないドライな作風も相俟って、半ば純化されたようなハードボイルド性が感じられる。“ザ・ドライバー”や“ザ・ディテクティブ”などといった記号的な役名も、本作の持つ一種の抽象性に拍車を掛けている(モンテ・ヘルマンの『断絶』みたいだ)。

80年代手前の作品ながら、ざらついた質感の画面からはアメリカン・ニューシネマやフレンチ・ノワールなどの残像が伺える。実際アラン・ドロンの『サムライ』などの影響を受けているみたい。ロサンゼルスの寡黙な都市風景を切り取ったカメラワークやカーアクション時のカット割りなど、要所要所での画面はやはり鮮烈で印象深い。ノワールやハードボイルド物で描かれる大都市、やはり独特の冷徹さと緊張感が滲み出てて味わい深い。

ライアン・オニールは確かに二枚目俳優がハードボイルド気取ってる感も否めないけど、寡黙な雰囲気も相俟って十分すぎるくらいクールなので何だかんだ憎めない。そしてブルース・ダーンはやっぱり良い俳優で、彼の憎たらしい存在感が終始に渡って映画に食い込んでくる。警察側であるはずのダーンが犯罪者のオニール以上に病的なアウトロー感を醸し出してくるのが強烈。イザベル・アジャーニも純粋なまでにクールかつミステリアスな美人でとても良い。

主人公に付けられる“カウボーイ”というあだ名に加えて、しきりに流されるカントリー・ミュージック、要所での銃撃のシーンなど、西部劇のイメージが埋め込まれているのも面白い。フロントドア越しの早撃ちで裏切り者をブチ抜く場面は痺れる。終盤のカーチェイスにおいても、最終的に“倉庫で隠密行動しながら敵の位置を探り合う”という西部劇のガンマンさながらの構図になるのでたまげる。

映画中盤は小競り合い的な駆け引きに終始していたり、終盤のカーチェイスにブルース・ダーンが特に関与しなかったりなど思うところはあるけど、主人公も警官も急に梯子を外されるようなラストは何故だか妙に清々しい。鞄を押し付けようとしたブルース・ダーンを見つめる部下の(あんたに付き合った結果がこれかよ……)と言わんばかりの眼差し、趣に満ちている。
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