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月に囚われた男のTPのネタバレレビュー・内容・結末

月に囚われた男(2009年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

 派手なアクションはなく、ほぼ、主演のサム・ロックウェルの一人芝居の上に、閉じ込められた空間と月面基地という特殊な事情もあって非常に外面的には地味な内容。
 一方で、元の人間の記憶を移植され、生まれてからずっと当たり前に人間であったと認識しているクローンが、3年程度しか寿命が続かないことを伏せられたまま、地球に帰る日を指折り数えて待っている姿、何体ものクローンがあらかじめ準備されていることや元の人間は地球にいて家族と普通に暮らしていることを知る衝撃など、精神的なインパクトは強烈。
 じっくり理解しながら観れば全く飽きないストーリー展開が上手い。ミニチュアを多用したSFシーンもなんか懐かしい。

 月にたった一人でいる男、という設定から手塚治虫の短編漫画「クレーターの男」(1970)を彷彿とさせたのと評価者のレビューを参考に観た。
 確かに低予算映画で、地味な内容なのだが掘り出し物の良作。
 最後のクレジットで基地を管理しているAIの声がケヴィン・スペイシーだったのがちょっとした驚き。

 ちなみに、手塚治虫の「クレーターの男」は、月の調査中にクレーターの断崖に宙吊りになったまま死んだものの、月の蒸気の奇跡の治癒力で何十年に一度目覚めるというもの。
 とてつもない孤独感と宇宙から見れば小さな存在でしかない人類の愚かさが、たった30ページ弱の中に凝縮した傑作で、誰か、この漫画を映画にしてくれないかなぁ。
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