みかんぼうや

月に囚われた男のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

月に囚われた男(2009年製作の映画)
3.6
月に囚われた男は、自我に囚われる。デヴィッド・ボウイの息子による映画監督デビュー作。

月面採掘のため、月で孤独に活動するある一人の男の物語。設定から「オデッセイ」のような内容かと思えばそうでもない。オープニングから登場するケヴィン・スペイシーの声が不気味なAIロボットから「2001年宇宙の旅」を一瞬想像するがこれもまた違う。地球に残した家族を想う姿は「インターステラー」を思わせるがやっぱり異なる。

アクションではなくSFヒューマン物であることから、上記の色々な作品をつい意識するが、終わってみれば独自の世界観を持ったユニークな作品。“宇宙で人間1人+AIロボ一体”というシチュエーションは、それだけで“何か嫌なことが起きそう”な不安感を感じさせ、序盤から描かれる主人公が夢見る妄想や悪夢のような描写がそれに拍車をかける。このあたりの世界観の作り方は巧い。

そして、その“何かが起こりそう”な不安感と不気味さは、中盤に発覚するある出来事でピークに。このあたりのじわりじわりと迫ってくる嫌な感覚は、映画としてはなんとも良かった。

SF映画的なネタとしては目新しいものではないし派手さもないが、ある事実の発覚から最後までは、SFヒューマンならではのなんとも虚しく切ない気持ちになる作品だった。
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