明石です

ミディアンの明石ですのレビュー・感想・評価

ミディアン(1990年製作の映画)
4.3
連続殺人を犯し、悪夢に悩まされた男が、ミディアンこと「死の都」を訪れて、闇の住人の仲間入りをする話。英国出身の怪奇作家クライブ・パーカーが脚本&監督を務めた『ヘルレイザー』の次作にあたる作品。

異形のモンスターが主役のダークファンタジーであるもかかわらず、彼らを食い殺す勢いで大活躍する精神科医兼、殺人鬼役のクローネンバーグ笑。理系のインテリなイメージがあるから、白衣のお姿がとてもお似合い。知的で抑制の効いた演技は、自分の映画でも主演したらいいのにと思うほど自然で、行き過ぎた潔癖症が殺意の元となってるという設定もまさしく本人の性格っぽくて、バーカーがこの人に役をオファーしたのもよくわかる気がする。しかも作家出身のなお二人だから、現場ではさそかし気が合ったことでしょう。

クライヴ・バーカーが自身の原作小説を自ら脚本&監督したことの意味はとても大きいと思う。作家らしいシニカルな台詞が耳に心地よく、狂気の中に漂う知性に感服させられる。「神は宇宙飛行士、魔法使いは虹の上、俺たち怪物は死都に住む」などなど、リズムに乗って運ばれる言葉が耳に残る。しかもそれを口にしてるのが異形の怪物というのがなおさら粋なのです。

またバーカーの映画らしくクリーチャーの特殊メイクは凄まじい気合の入りようで、前作『ヘルレイザー』から続投したボブ・キーンが、死都に住む怪物たちをゲゲゲの鬼太郎の世界かというようなバリュエーションで次々に登場させる。そしてストーリーは、死都に攻めてきた人間を相手に闘う彼らを哀感たっぷりに描く、アバターさながらのスペクタクルに。グロテスクな妖怪さんたちが次々加勢に現れる展開は胸熱でした。

しかし、、作品全体としては、ポストプロダクション段階でスタジオ側にズタズタに切り刻まれた跡の残る、ほんとうに惜しい出来映えでした。たとえば、怪物vs人間の戦争シーンで、昼間に戦っていたはずが次のカットでは突然夜になっていたり、その他も、場面やカメラワークの切り替えに不自然さが目立ち、強引に切り貼りされたことが容易にわかってしまうという、、実際、本作の仕上がりにはバーカー自身相当不満だったみたいで、この後5年近く監督業から離れてるのはその影響なのかな。本作より50分(!)も尺の長いDC版もあるみたいなので、また改めて見よう。

とはいえ個人的に好きなシーンは多くて、情熱的な口づけの最中に恋人が怪物に変わってしまったのを知り、それでもキスし続けるヒロインには素敵な愛を見た。あと作品自体には関係ないけど、リヴァプール生まれのクライブバーカーが、まさかのジョンレノンと同窓生だったという話とても好き。リヴァプールと言えば!な方々がそんなところで繋がってるなんて、、
明石です

明石です