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崖の上のポニョのandesのレビュー・感想・評価

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)
3.8
10年ぶりくらいに再見。当時はジブリに期待していた整合性やディティールがデタラメでガッカリしたが、「風立ちぬ」までのキャリアを知ってみると悪くない。むしろ欲望に忠実で、なにより画で語ろうとしているのは好感がもてる。自戒も込めてだが、映画は「物語を入れる箱」ではない。

ホンワカした雰囲気の反面、不気味でエロくフェティッシュな作品である。ヒロインはとうとう、野生児(もののけ姫)⇒ババア(ハウルの動く城)⇒半魚人(ポニョ)と、順調にアブノーマルになっている。異界から現れた規格外の女に付きまとわれて、子供の時分に婚約させられる恐ろしい話。しかし、嵐の中、自分を求めて爆走する夢の女でもある。ある種、運命の相手と結ばれる究極の愛である(この辺は「風立ちぬ」で結実する)。双方の母親が心配するのは無理もない。運命の愛の行く末は厳しいのだ。

決して子供向けではないのだが、子供も楽しめる画作りになっている。かえって大人の方がこの作品を「子供向け」と勘違いしているかもしれない。高畑勲による「パンダコパンダ」(1972)の2話目からの引用はポイントである。この時点で宮崎駿は総決算に入ろうとしている。なお、ポニョのモデルは漫画界の異才、諸星大二郎の「栞と紙魚子」シリーズに出てくるクトゥルーちゃん。
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