踝踵

崖の上のポニョの踝踵のネタバレレビュー・内容・結末

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

改めて見ると娯楽(?)要素がやや目立つけど、「知性を持つことの素晴らしさ」を描いているような印象を受けた。

特にポニョが血を舐めて半魚人になってから宗介とリサの家で過ごす時間の描写が丁寧で、どんどんヒトが持つ知性、そして知性を持つことの尊さをグラデーションで描いていて圧倒された。
具体例:停電になった時「水が出るかな?」というリサの問いに「出る!」と2人が質問に答えて、「崖の上に貯水タンクがあるからね」と宗介が根拠を補足する。本当に些細なコミュニケーションだけど、めちゃくちゃ丁寧に人間の知性のあり方&ポニョが知性を獲得する様子を描いていてめっちゃおもろい。そして知性を獲得することはそれ即ち人間になりたいポニョにとっての喜びなので、全身全裸で学習する楽しさに溢れていてほっこりする。

また、バケツに入れたポニョを宗介が茂みに隠す時、猫に食べられないように大きな葉っぱをバケツの口に乗せて中身が見えないようにしたと思う。その時、ポニョは葉っぱの隙間から宗介を覗こうとし、その描写に驚いた。あんなに短い時間で、ポニョはただの動物ではなく好奇心を持った知的生物であることをサラッと説明できるんだ、と感動した。

何よりオチに納得した。知性という文脈で解釈すると、この映画で最後に描かれるのは「許す」という行為で、この映画の最後に描かれる知性として物凄く納得性が高かった。確かに人間にとって対立する相手を許すことは最も難しくて、それでいて最も尊く、他者への理解や共存に不可欠な行為だと納得した。小難しくなりそうな要素を子供の素直な視点で描くことで飲み込みやすい形になっていると思う。

ただ一方で、「見ていてゾッとするようなニュアンスの知性」も同時に、宗介やポニョの態度や行動から読み取れると思った。例えば、承認欲求が強そうな人や失礼な人には明らかに塩対応で挨拶もしないなど「選り好み」する。また、生き延びるために、明らかに自分より知性が無さそうなクラゲなど他者を利用したり、怒られそうな場面で逃げるなど「要領の良さ」の描写もある。こういう、賢いけどちょっと性格の悪い「知性のダークサイド」や「知的生物の怖さ」が物語の伏線になるのかな、とちょっと期待しすぎた。

あと緑のバケツがポニョにとっての「故郷」である事が分かりやすく描写されていたな、と感じた。バケツを持ったポニョが宗介の家に帰るシーンはいろんな意味合いが詰まっていて味わい深かった。

結局ラストのシーンでおばあちゃん達は津波に飲み込まれて死んだのではなく、ガッツリ生存しているという事なのか?とちょっと迷った。生存できたとしたら魔法のおかげ、という事になるのかと思うけど、やっぱり魔法要素が唐突なのかな…もしかしたら見落としているのかもしれないけど、そもそもなんであの世界に魔法という概念があるのかだけよく理解できなかった。
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