netfilms

対決のnetfilmsのレビュー・感想・評価

対決(1990年製作の映画)
3.8
 アメリカと旧ソ連が冷戦時代を終結させてまもない頃、西ドイツとチェコスロバキアの国境地帯で睨み合う米軍ノールズ大佐(ロイ・シャイダー)とソ連軍ヴァラチェフ大佐(ユルゲン・プロホノフ)。ノールズは勇敢かつ有能な軍人で部下からは尊敬されたが、性格に難があるため上官からは疎まれている。ある日、西ドイツとチェコスロバキアの国境線上で西ドイツに亡命しようと逃げて来た男が、旧ソ連軍に射殺される。戦争映画とはいえ、米軍と旧ソ連軍がいがみ合うのはクライマックスくらいで、1時間30分の本編のほとんどは、いきり立つロイ・シャイダーの過激な行動とそれに激情するユルゲン・プロホノフのつばぜり合いのみで進行していく。冒頭の大佐同士の出会いの場面こそ、亡命者を背中から打って殺す旧ソ連軍の大佐の冷酷さが描かれるが、その後は明らかに旧ソ連側に非がない中での、米軍大佐の身勝手な単独行動に苦笑する。ノールズという男はベトナム戦争の功労者で勲章ももらっているのだがあまりにも目の離せないアクの強さから、西ドイツの国境地帯に左遷されている。

 この男が、クリスマスの夜にウィスキーを呑みながら、国境を侵犯する。敵軍の若者3人に自分あてのハッピー・バースデーの歌を歌うことを強要し、旧ソ連軍の見張りの管制塔に火を放って全焼させるなど、大佐とは思えない国益を損なう行動のオンパレードとなる。それに激怒した旧ソ連軍が彼の乗って来たジープを爆破し、堪忍袋の緒が切れた主人公の前に、西ドイツに亡命しようと目論む女が現れる。ある意味ランボーより気が狂った米軍大佐を、『ジョーズ』のブロディ署長役や『フレンチ・コネクション』の刑事役で有名なロイ・シャイダーが熱演している。対する旧ソ連軍大佐役を『U・ボート』の艦長だったユルゲン・プロホノフが熱演する。この2人の対立を苦々しく思う主人公の上官役を名脇役ハリー・ディーン・スタントンが演じる。この映画が素晴らしいのは、何と言っても冒頭の赴任シーンの車移動だろう。様々な角度から撮られたドライブ・ショットのつなぎの上手さは流石フランケンハイマーと大いに唸ってしまうクラシックな強度を讃えている。クライマックス前のヒッチコックばりの車内サスペンスがこれまた素晴らしい。
netfilms

netfilms