GT

マーティのGTのレビュー・感想・評価

マーティ(1955年製作の映画)
4.5
34にして未だ結婚もせず付き合っている女もいない男が、同じような境遇の女と恋に落ちる映画。
マーティの「モテない独身男性」ぶりがとにかく痛切で声をかけてはフラれるを繰り返して心が傷ついた結果、コンプレックスを完全にこじらせている様は涙を禁じ得ない。そんなマーティの行動や挙止動作もいかにも童貞臭く、女性をデートに誘おうと電話をかけるもガチガチに緊張して不自然な会話になったり、女に泣かれて抱きしめようと思うも勇気が出ず腕を軽く触るだけに止めてしまったり、初デートで舞い上がって自分のことを延々と話してしまったりと非常に生々しい。
マーティの境遇も痛切ならマーティの母親のテレサや彼の友人のアンジー、叔母のキャサリンやその息子夫婦たちの境遇も切実。キャサリンは息子の嫁とそりが合わず家を追い出されてしまい、女は子育てが終われば用無しだとテレサに嘆く。それを巡って息子夫婦の仲が険悪になるのも、なんだかありそうな光景だ(険悪な仲なのに完全に舞い上がったマーティが空気読まずに入り込んでいくシーンはこの映画最大の笑い所)。それを聞いたテレサが自分も追い出されることを恐れてクララを必死に中傷するシーンは、滑稽ながらもどこか哀愁が漂う。独身仲間のアンジーはマーティが「抜け駆け」することを恐れてか、やはりクララを中傷する。どの役に対しても、気持ちが痛いほど分かる。
ただ結末はかなり急というかもっと先を見せて欲しかった感がある。母親との確執も解消されてないし結果的に友より恋を取ったと受け取られるような終わり方。その部分をすっきりさせるか、あるいは結局恋を諦めてしまうビターエンドかの方が、個人的には良かった。
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