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インドへの道のtakのレビュー・感想・評価

インドへの道(1984年製作の映画)
4.0
「アラビアのロレンス」の名匠デビッド・リーン監督が76歳で撮った遺作。

東インド会社が存在していた頃。検事としてインドに赴任している婚約者を訪ねて、アデラとモア夫人がやって来る。婚約者ロニーを、とても威厳ある態度で仕事をしていると聞いていたアデラは、以前の彼からは想像できないやつれた姿に驚く。現地でのインド人とイギリス人の反発は根強かった。そもそもカースト制が存在するインドにイギリスが介入し、そこで白人優位主義をを押し付けているからだ。

しかし個人レベルではイギリス人に理解を示す者もいた。アジズはその一人で、彼はある日アデラとモア夫人を連れてマラバー洞窟を訪れるのだが、アデラが洞窟の中で取り乱してアクシデントを起こしてしまう。アジズはアデラを襲ったとして訴えられる。無実を信じるのはイギリス人教授ただ一人で、証人となり得るモア夫人は帰国の途上で急死してしまう。この事件を経て、アジズはイギリス人への態度を変え、反発を露骨に示すようになる。そして長い年月の後に、誤解を解くために再びインドを訪れる。

アデラに何が起こったのかを明確に示さないので、分かりにくいという感想が多い映画。「本当のインドが知りたいのよ」とアデラは言う。それは「スラムドッグ$ミリオネア」で「本当のインドが見たければこっちさ」と少年が誘ってくれたのとは違う。イギリス人は土足でズカズカと乗り込んで、勝手に理解した気になっているだけ。個人レベルでは異文化と現地の人々に理解を示しているつもりでも、それは単なる好奇心でしかない。インド人と一括りで相手を見て、決して個人として理解をしようとしているわけではない。

洞窟の場面は様々な解釈があるようだ。自分がいつしか現地人を見下していた気持ちが、同じように自分にも向けられているのこと。それが洞窟内の反響に象徴されているってことなのか。異文化が出会うことで、友情も生まれれば反発も起こる。相互理解の難しさ。

エキゾチックなインドの風景、オスカーを受賞したペギー・アシュクロフト、モーリス・ジャールの音楽はもちろん見どころ。インド人哲学者を演じた、オビワン・ケノービもとい、アレック・ギネスの怪演にも是非注目を。
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