だい

名誉と栄光のためでなくのだいのレビュー・感想・評価

名誉と栄光のためでなく(1966年製作の映画)
3.3
原題の「LOST COMMAND」こそがこの映画のテーマだから、
いくら何でも邦題が酷すぎて、
この映画に対するイメージを変えちゃってる気がする。

ラスペギーの焦りや苛立ち。
勲功のための私兵のような軍隊。

インドシナ戦争からアルジェリア戦争へ転戦するしかなかった、
イデオロギーなき「生存のため」の集団。

そのやるせなさ。
その諦念。

そういう無意識にメランコリックな色合いを、
邦題は何も表現できていない。

邦題を付けるなら、
もっともっとネガティブな言葉で栄誉を彩るべきだった。
と、思う。


そんな「疲れた」指揮官として、
アンソニー・クインがあまりに合いすぎていて、
こういう役をやらせたらロバート・ライアンなんかもよく似合ってるけど、
クインのほうがより野卑で俗っぽくなるからベストマッチ。

どんなことを利用してでも、
この戦いに勝つしか生き延びる道はない。
という執念のラスペギー。

それに対して、
得体も知れぬ商売女に騙され、
理想主義で部隊やひいては戦局をすら危機に陥れる軟弱書生のエスクラビエ。


戦争の下での価値観と、
普遍的な価値観。

戦時下だから仕方ない。
を認めるべきか。
でもね、戦争とか関係なくモラルというものを。
と主張しても、
敵がそうじゃなければ、
それはただ騙されてやられるだけなんだよな。


その価値の中で生きるしかないラスペギー。
その中で生きられないと思ったエスクラビエ。

そして、
そんなことは関係なく続く民族独立運動。


まさにLOST COMMANDなんだよなぁ。



圧倒的にアンソニー・クインが主演の映画だから、
アラン・ドロン好きすぎな日本人からの評価が低くなってて損してる気がする。
いい映画だと思うんだけどね!
だい

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