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名誉と栄光のためでなくのHKのレビュー・感想・評価

名誉と栄光のためでなく(1966年製作の映画)
3.5
邦題とジャケ写でジョン・ウェインのタカ派戦争映画と勘違いしてスルーしかけましたが、キャストを確認するとアンソニー・クイン、アラン・ドロン、ジョージ・シーガル、モーリス・ロネ、クラウディア・カルディナーレなど凄い顔ぶれ。
よく見るとジャケ写の兵隊はJ・ウェインじゃなくてA・クインでした。

本作は第二次大戦後の第一次インドシナ戦争~アルジェリア戦争というフランスの植民地の独立戦争を、敗戦側のフランス軍空挺部隊の視点から描いた珍しい戦争映画。
原作はフランスのベストセラー小説で、主要人物たちには実在のモデルがいるとか。
ただ、このストーリーでこの顔ぶれなのに、アメリカ映画なので全員が英語。

冒頭、劣勢のフランス軍の増援パラシュート部隊が降下中はベトナム兵から狙い撃ちされ、無事に地上に着いても銃剣でメッタ突きという容赦の無い戦闘から始まります。
そして本作では迫力の戦闘アクションだけでなく、キレイ事では済まない戦争と人間の汚い面もいろいろと描かれます。

監督はマーク・ロブソン(『チャンピオン』『トコリの橋』『脱走特急』『大地震』)。
仏パラシュート部隊の粗野で頑固なリーダーはインディアンからアラブ人やフランス人まで多国籍のキャラを器用にこなす『道』『ナバロンの要塞』『その男ゾルバ』のメキシコ系アメリカ人のクイン(当時51歳)。
お相手はミシェル・モルガン(私はよく存じませんが、遠野なぎこ似)。

クインの右腕と左腕にドロン(当時31歳)とロネ(39歳)の『太陽がいっぱい』コンビ。
同じ部隊の仲間シーガル(当時32歳)は浅黒いメイクでなんとアラブ人役。
これらのメンバーが迷彩服でマシンガンを撃ちまくるというのもレアな図かも。
CCことカルディナーレ(当時28歳)はシーガルの妹役でやはりアラブ人役。CCはけっこういろんな人種やってますね。
ベトナム兵の中にバート・クウォーク(『ピンクパンサー・シリーズ』のケイトー)や仏の外人部隊(?)にアル・ムロック(『続・夕陽のガンマン』『ウエスタン』)も発見。

アルジェリア戦争時の城塞カスバや爆弾テロの描写は名作映画『アルジェの戦い』とも重なります。
原題は“Lost Command”。Commandの意味は統率する、指揮する,命令する・・・
なるほど、もはや大義もヒーローも存在しない戦争を描き、フランスでしばらくは上映禁止だったというのも頷けます。
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