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海の牙のodyssのレビュー・感想・評価

海の牙(1946年製作の映画)
3.2
【潜水艦内に見られる戦争末期の人間模様】

ルネ・クレマン監督が戦後すぐに作ったモノクロ映画。BS録画にて。

語り手としてフランス人の若い医師が最初に出てくるのですが、その後に展開されるストーリーはその医師の登場以前から始まります。第二次世界大戦末期、ドイツの敗戦が見えてきたために、オスロからドイツの潜水艦で一群の人々が南米を目指します。ナチ将校や、その愛人の北欧女性とその女性の夫であるイタリア人男性、その他。彼らは南米で連合軍への再反撃とドイツの再興をもくろんでいる。

ところが途中で北欧女性が病気になってしまい、艦内には医者がいなかったため、途中フランス海岸部に立ち寄り、医師を誘拐してしまう。これが語り手の医師です。

話は、ドイツの敗戦が目前に迫っている中での、狭い潜水艦内の人間模様や各人の思惑の違いなど、色々。一見とりとめもない話なのですが、退屈はしません。

途中で補給のために某国に立ち寄ったりしながら潜水艦は航海を続けますが、燃料が尽きかけ、ドイツの補給艦を見つけて燃料を入れたはいいけれどそこでドイツの降伏というニュースが入って・・・・。

最初に書いたように、第二次大戦後すぐ作られているのですが、あくまで視点は冷静で、ドイツ人が極悪非道だとか、フランス人は正義の味方だとか、そういう分かりやすい描き方ではありません。誘拐された被害者のフランス人が語り手だからフランス映画だとは分かりますし、ドイツ側は最終的には自滅するのですが、むしろ戦争の帰趨が決しかけた頃に見られる様々な人間模様を描いた映画と見るべきでしょう。

戦争をダシに使った人間模様という点では、有名な『禁じられた遊び』とも共通点があるのかも知れませんね。
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