KnightsofOdessa

ディンゴのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ディンゴ(1991年製作の映画)
2.5
[マイルス・デイヴィスが復活する話] 50点

ロルフ・デ・ヒーア長編三作目。オーストラリアの田舎町に住む青年ディンゴは、20年前に出会ったジャズミュージシャンの演奏が忘れられない。空を飛ぶことへの憧れを描いた前々作『ヒコーキ野郎 / スカイ・キッド』、空から来た侵略者との不可視の戦いを描いた前作『エンカウンターズ / 未知への挑戦』の路線を引き継いで、本作品でもジャズミュージシャンのビリーは、ディンゴ少年の頭の真上を通って田舎町に降り立つ。その後は大金持ちになって帰郷した親友と妻を取り合う云々という超絶どうでもいい三角関係で尺を伸ばしつつ、パリに行ってビリーと共に演奏するという夢を先送りにしているディンゴの生活が描かれる。野犬の捕獲の話とか、三角関係とか、とにかくどうでもいい話がわんさか入っていて、全体的にボンヤリしている印象。ビリー役はマイルス・デイヴィスが演じており、引退した伝説のジャズミュージシャンとして復活する終盤だけは見応え十分。夢が叶った瞬間という意味では『ヒコーキ野郎 / スカイ・キッド』みたいな美しさと爽快感がある。終盤で駄目押しにようにエッフェル塔が写ったのには幻滅したが。

ロルフ・デ・ヒーアは主人公の潜在的な欲望を全て叶えるラストを用意してきた。本作品ではパリでの邂逅を経て故郷に帰ってくると、主人公を馬鹿にしていた隣人たちやイマイチ信じられていなかった妻子がパーティを開いて待っているのだ。ディンゴにとって、潜在的に求めていたのは、ビリーとの演奏よりも、夢を受け入れてくれる人々の方だったのかもしれない。
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