何とも言えない、名人芸を見たような、充実した、椎茸を噛み締めた時に出る甘い出汁のような満足感でした。どのカットも絵のようで色も綺麗で見てるだけで幸せになります。
いつもの話ではない異色作で、しかも珍しく感情をぶつけた罵り合いもあり、他の作品と違うテイストなところが好きです。私も似たような仕事をしてるし、お金は常にカツカツだし笑で気持ちがすごくよくわかりました。
今回気になったのは、「今の客は真面目な良いものやっても来ない、自分のやってる物は客は喜ぶけどあんまり良くない物だから見るな」と旅芸人一座の座長が仲の良い若者に言うシーン。これは監督の本心ではないかな…と思いました。
しかし、それを見てる我々に訴えるわけでもなく、釣りをしながらサラッと言っちゃう。今まで見逃してました笑。
普通なら悪さをする人がいるならそういうことをするシーンが入るものだけど、そういうところは皆無で、事後だけが映るのが面白いなと思います。
そして事後の残された人たちの絶望感漂うシーンも軽快な音楽が流れて、見てるこちらは全然暗い気持ちにならないのも面白い。
なのに見せ場はしっかり音楽もなく丁寧に。じんわりきました。
一つ欲を言えば鴈治郎さんが劇場で演じてるシーン見たかったな。声は聞こえるんですが。これもきっと意図されたことなんでしょう。
心が整いました。姿勢が良くなりそう笑。やっぱり好きです。