masat

くノ一忍法のmasatのレビュー・感想・評価

くノ一忍法(1964年製作の映画)
3.0
1964年。これが東映トンデモ映画、いや“東映ポルノ路線”の元祖なのか?
だとすると、その先鞭を付けたのは、監督・中島貞夫ということになる。
大奥、尼寺、セックス地帯・・・それらのシリーズがどの様にエゲツなくなっていくのか?その時、牧口、石井は何をやっていたのか?やがて、任侠、牡丹、仁義、さらににっかつに駆逐されながら、やり返す、そんな東映の、押して押されの時代の流れを観ていきたい。

本作は、東映黄金期、時代劇を支えた京都スタッフたちが、“このホン、何かおかしいぞ”と疑問を抱きながら、総力を注ぐ、その品格と繰り広げられているモノのギャップが堪らなくイイ。
堂々とした映画のフォルム、奥ゆき、艶、豊潤な映像の威力を駆使しながら、B級俳優を並べ立て、どことなくイヤらしいムードと技で掻き回し、いかがわしいながらも今は失われた映画の品格を保つ。その掛け算が3倍になっているのが、凄い。

東映の帝王・岡田の直感で、こんな作品でデビューさせられてしまった中島の運命は決まった。
その運命に常に身を任せながら、東映を飛び出し、フリーになってもなお“御用聞き”としての才覚を発揮し、デビューして60年、2019年までに60本強の作品を生み出し、時には、東映の看板大作をも担った、その功績はデカイ。

この豊かな映画的世界と、異様な男女忍者たちの死闘、姫の意地、巨大なる葵の御門の征服の時を、さらにチャンス!とばかりに熱演する“B級役者たち”と、そこに注がれる愛情を、ぜひ観て欲しい。
masat

masat