よしまる

最強のふたりのよしまるのレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
3.2
 評価の高い作品をようやく観賞。フランス独特のエスプリの効いた、ハリウッドとはひと味もふた味も違うものを期待したのだけれど、、普通だったw

 原題にあるアンタッチャブル(仏語でアントゥーシャブル)の通り、本来まみえるはずのない富豪と貧民。
 ご都合主義すぎる馴れ初めは実話が元ということで流しておくとして。
 難病を患う大金持ちのフィリップに対し障がい者として差別することなくあくまで1人の人間として向き合う貧困層の若者ドリスとのふたりのふれあいを描く物語。

 金持ちだから。障がい者だから。そうした偏見を持たずにフラットに接するドリスの真っ直ぐな心はスーッと胸に入り込んでくる。
 個人的には見てて気持ちの良い男ではない。スピード違反して警察を騙くらかすわ、無知をいいことにオペラやアートを嘲笑するわの好き放題。まあそれが包み隠さない本音の生き方ということなのだろう。なかなか本音で生きていけない自分には羨ましくもあり。

 それに比べてフィリップのほうは金持ちという以外の魅力に乏しい。まあ寂しい老人と言ってしまえばそれまでなのだけれど、例えば絵画のくだりにしても、まるで高価な絵を買える自分が言うからこそドリスの絵も高く売れるみたいな、金持ち特有のマーケ志向が鼻につく。オペラを茶化されても一緒に楽しんでいるようだし、マリファナにも躊躇することがない。この辺りは大筋に関係ないだけに、好みの分かれるところかもしれない。ディテールで好き嫌いって決まるからね。

 ボクとしてはオペラやアートを馬鹿にされて一緒にヘラヘラ笑ってるようなオッサンとなぜ友情を結べたのか、それともだからこそトモダチ感があったのか、、カネ以外の何がドリスの心を動かしたのかが終始ピンと来なかった。
 フィリップがなぜこれだけの財を築くことができたのか、どんな人物像なのかの描写が希薄なので病に侵され奥さんに先立たれという上っ面の不幸ばかりが先行してしまっている。だがそもそも富豪なんてそんなもんというのが、つまりはフランス的な自虐なのかもしれないとも思った。

 そう考えていくと、これはやはり立場の異なる2人の友情を楽しむべき映画であり、障がいは2人にとってはひとつのきっかけに過ぎない。それこそが障がいに対する同情や偏見からの解放ということなのだろう。

 2人が夜の街に繰り出したり、絶景の空へ飛び出したりするのは視覚的にも感動で、これは映画館の大画面で観たかったなぁ。
 ラストは2人のお互いを思いやる気持ちが最大限に発揮されて、それぞれの道が開けてイイ話〜って終わり方をしたので満足感もたっぷり。心からお互いを尊重し合っていることがわかるレストランでのエンディングはとても良かった。

 結論として、障がいとの向き合い方をサジェストする映画でもなく、悪戯に感動ポルノへと寄せてないのが観ていてハッピーになれて良いという一方で、キャラクターの魅力は平均的で映画としても特別面白いものでは無かった、という感想。

 以下は余談。

 エンドロールの本人さん登場でズッコけた。アラブの人をアフリカの人に設定を変えてまで伝えたかったことは何なのか。
オペラを嘲笑するのを良しとしても(一般的には迷惑という点でアウトでしかないがそこはさておき)、そのホールの観客には有色人種はいないし、黒人にはクラシックの素養がないという典型的差別表現の上に成り立たせたかったものはナニ?要らなくない?
 人種や出自を超えて育まれた友情にフォーカスするのなら、つまらない差別表現をもっともらしく挿入するのは勘弁してほしいなと思った。ふだんはあまり気にならないところなんだけれど、ハッピーな装いだけに気になってしまい減点。