ボブおじさん

最強のふたりのボブおじさんのレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
4.5
まず「最強のふたり」という日本語のタイトルがいい!
フランス語の原題〝Intouchables〟の持つ、触れることの出来ない・介入できない特別な関係など含みを持たせた意味合いとこの映画の内容をたった一言で見事に表現出来ている。
最高のふたりでは弱いし、特別なふたりでは別な意味になってしまう(^^)。

二人の関係がまさに最強で、お互いの身分から資産、生活環境、人種、年齢、性格、好みに至るまでことごとく対照的。

そんな交わるはずのない二人がやがて心を通わせて、誰の邪魔も入らないほど絆が強くなっていく。

あちらのポスターに記載されている〝Sometimes you have to reach into someone else's world to find what's missing in your own.〟(時には、自分の世界にないものを探しに、他の世界へ行くべきだ)がこの映画のテーマを示している。

地位も教養もある車椅子の白人中年男が移民の貧困黒人青年に自分の知らない世界へ連れて行ってもらう話で、そこには一切の忖度はない。知らない世界へ連れて行ってもらうのは、黒人青年にとっても同じことで二人の立場は対等だ。

この関係性が今まで周りから気遣ってもらいながら、その経済力でつながっていた関係性とは決定的に違う。まさに最強の関係。

共通点ゼロの2人がぎこちない関係からやがて強い絆で結ばれていく実話に基づく物語という点は 「グリーンブック」と同じだが、違うのは雇われ側が黒人で雇い主が白人。粗野なのが黒人で教養と品格があるのが白人と逆である点。(こちらの方が普通だけど)

「ドライビング・MISS・デイジー」も白人の老婦人と黒人の運転手の心の交流と友情をユーモラスに描いているが、こちらの笑いはフランス流でシニカルだ。

涙を誘う感動的な話かなという思い込みは、冒頭の警察との激しいカーチェイスからの不謹慎で笑えない切り抜け方法で吹き飛ばされる。

原作が書かれて以来、たくさんの映画化のオファーを断っていた作者が監督の〝コメディという角度からあなたの物語を撮りたい〟という強い思いに動かされ、〝笑える映画であること〟を条件に許可を出したというのも頷ける。

何度見ても笑って、泣いて感動できる。
日本で公開されたフランス映画史上トップの興行収入を記録したのも納得の作品。