Ki64

最強のふたりのKi64のネタバレレビュー・内容・結末

最強のふたり(2011年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

劇中で『September』が流れる映画って結構あるなと、一時期そのリストを作ろうとしていた。結局頓挫したけど。
この作品で流れるSeptemberはとてもいい。何故なら、ドリスがホントに気に入ってて流してるのが伝わってくるから。始まりからもうノリノリなんですよ。

誕生日会で流れるもう1曲も良いですね。『こうなると俺はもう止まらねぇぜ!』って思い切りはっちゃけて踊り出すドリス。
周囲を巻き込んでいく様と、それまでクラシックで厳かだった雰囲気をぶち壊す様の両面が描かれ、このシーンこそ『まさにドリス』を見事に表しているかのよう。

中盤は頻繁に見れるフィリップの笑顔が好きです。
ドリスが屋敷を去ったあと、再び笑顔が見れるのはやはりドリスと再会した時。
そこからラストの流れを観ても、フィリップが求めているものをドリスはちゃんと分かっていたんでしょう。
警察から逃げるときの発作の演技もまさに阿吽の呼吸。

これを見るに、ドリスでなければフィリップが文通相手と出会うという大きな転換を迎えることはなかったでしょう。
他の介護者たちは、フィリップのほぼ全身麻痺という重い障害をまるで腫物を扱うかの如くな態度で(まぁ当然っちゃ当然だけど)、出て行けと言われれば言われるがまま踵を返し立ち去っていきます。
その圧と壁をぶち破っていけるのがドリス。

バディとの友情を描いた作品は色々ありますが、この脚本力とキャストの演技力が素晴らしくて、何度でも観たくなる魅力溢れる作品に仕上がっています。

お互いまるで正反対のタイプなのはこの手のジャンルならではのスタートで、繊細に関係を築いていくのかと思いきやデリカシーゼロのドリスはズカズカと立ち入っていく。
フィリップもこんなタイプ初めて!と満更でもない様子で、やはりこの二人の友情が確固たる物に仕上がっていく過程は面白い。

たまのオフでフィリップ邸を出ると途端に暗くなるドリスの複雑な家庭事情、首から下が麻痺という重度の障害を抱えてしまい、それ以上に、最愛の妻を失ってしまった悲しみが大きいフィリップ。
でも、一緒の時は二人とも屈託のない笑顔を見せてくれる。

どんなに重く辛い環境であっても、そのことを悲観することなく、楽しむことを大事にし、強く生きるヒントを得られる、大好きな1本です。


好きなシーンはいっぱいありますが、
『ノドをかっ切れ』『調子戻ったね』がお気に入り。
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