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最強のふたりのmickeyのレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
4.0
まず、クソの話をしなければなりません。

糞です、ウンチ、大便、下の世話です。

この映画、介護の話なのに排泄処理の描写がありません。
いや、映画を観に行ってそんなの見たくないのは分かりますが、介護で排泄処理は避けては通れない仕事ですよね。体験したことがある人なら分かると思いますが、赤ちゃんのおむつ替えだって一苦労なのに、どう見ても60kg以上はある成人男性の排泄処理を毎日しなければなりません。
毎日、他人のケツを拭くんですよ。
現実には「介護疲れ」や「介護うつ」という言葉が一般化するくらい過酷な仕事であり、それに見合うだけの高収入・高待遇が受けられるお金持ち設定だから成立する話だとも思います。
個人的には、介護の現実的な側面も描くべきだったと思います。

フィリップがドリスを選んだ理由
大富豪フィリップは、自分が大金持ちということがアイデンティティーだったように思います。だから、自分が身体障碍者になったことで今まで自分と近しい存在だったインテリ層(彼を介護しようと面接に来る専門家達)から、見下されるんじゃないかという不安と屈辱感があったんじゃないでしょうか。
要するにフィリップは差別的な思考の強い人物で、自分が肢体不自由者になったことでより卑屈になっていたんだと思います。
そこに、彼が知る世界の外からドリスがやってきます。ドリスは単純に金が欲しい、そんな気持ちを隠しもしません。それはフィリップの自尊心を満たしてくれました。大富豪の俺はまだ価値のある人間だ!と。

そんなきっかけで出会う二人ですが、時間を共にしてみるとウマが合う。全く自分とは接点のない人だけど、話してみると妙にウマが合う人っていると思います。その辺は相性の問題ですが、主演のフランソワ・クリュゼとオマール・シーが魅力的に演じているので、実際には無茶なことをしているドリスやそれを嬉々として受け入れるフィリップのコンビが痛快に見えてきます。
ドリスの背景にはフランスの貧困問題があるのですがそこはあまり踏み込まずに、本来は触れるはずのない二人(Intouchables)が友情を築く物語として爽やかな後味のある作品でした。イタリア語題は(Quasi Amici=まるで友達)。

本作公開の数年後にパリに行きました。
駅構内で車椅子の高齢者達を介助するアフリカ系の人達を多く見かけ、本作の影響の大きさを感じました。
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