たにたに

エルマー・ガントリー/魅せられた男のたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

【愛は明けの明星、宵の明星】2022年155本目


エルマーガントリーは、いわば流れのセールスマン。口が達者な上に、女好きのプレイボーイだ。
信仰団体の女教祖シスターシャロンに一目惚れし、近づくために彼女の集会で即興の説教で皆を魅了させ、シャロンは彼に心を奪われていく。

経験が豊富な男性と、恋愛をあまりしてこなかった女性という関係性。口八丁手八丁な見事さと、あなたと一緒にいたいんだという直球な表現はさすが営業マン。

"愛は明けの明星、宵の明星"
明星とは金星のこと。
金星は西洋ではビーナスvenus と呼ばれているらしい。愛と美の女神の象徴。
幾度となくエルマーが発するこの言葉にどのような意味があるのか。

夜明けと日没にしか肉眼では見えない金星。愛、その姿をわずかなチャンスに掴み取ることが鍵だと説いているのかもしれない。

2人は人気を博し、メディアに翻弄されながらも幾度と乗り越え、2人で幸せな生活を歩んでいくはずだったが、エルマーは恋に盲目であり、それによって過去のだらしなさが仇となる。

一瞬にしてエルマーは市民の敵となり、卵やレタスを投げつけられる。

しかし、この映画の登場人物はおしなべて改心をする。自分のしたことに責任を感じ、開き直ることはしない。

そしてその後悔は、誰かの優しさによって包まれる。

最期のシャロンの覚悟には、我々には計り知れない思いがある。

信じていれば、きっと神様が助けてくれる。彼女はそれをやり遂げた。

エルマーは美しい明けの明星を拝むことができなかった。そこに残ったのは焼けた教会だけ。だけれども彼女を崇拝した多くの信者がいる。信仰が人々の気持ちを一つにした。

美しさの中にも悲しさと虚しさがある。
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