櫻イミト

エルマー・ガントリー/魅せられた男の櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.5
「暴力教室」(1955)などのリチャード・ブルックス監督が、現代アメリカのキリスト教における信仰心と金の問題を描いた社会派ヒューマンドラマ。アカデミー賞で主演男優賞(バート・ランカスター)、助演女優賞、脚色賞を受賞。撮影はフィルム・ノワールの巨匠ジョンオルトン。

1920年代アメリカ。口八丁のフーテン営業を続けているエルマー・ガントリー(ランカスター)は、ある町で美しい女伝道師シャロン(ジーン・シモンズ)に一目惚れする。彼女の気を惹きたいという不純な動機で伝道活動を手伝ううち、持ち前のセールストークで伝道師として有名になり、彼女の名も大きく広まっていく。やがて不動産会社などのスポンサーが付きラジオでの伝道もスタートするのだが。。。

かなり面白く見応え充分だった。バート・ランカスターはオスカー受賞も納得の熱演。新興宗教ではなく王道のキリスト教を題材にしている事、そして伝道師シャロンの純粋な信仰心と彼女へのエルマーの一途な愛情に濁りのないことが、スキャンダラスな内容にも関わらず本作を骨太なドラマに仕上げている。

神が本当に存在すると思っているか?伝道活動を続けるには金が必要なのか?等々、現代のキリスト教信仰に関する基本的な疑問は本編の台詞の中で隙なく取り上げられている。その上で終盤に突飛なことが起こるのだが、それが映画ならではのロマンであり、よくぞやったと称賛したい。

このところ聖書の勉強をしているので割と隅々まで理解できたが、キリスト教をあまり知らない日本人だとピンと来ないところがあるかもしれない。このところ、西洋の映画を鑑賞するにはキリスト教の知識が常識として必要なのだと思い知らされているし、これまで観て来た作品も改めて鑑賞する必要があると考えている。
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