Omizu

エルマー・ガントリー/魅せられた男のOmizuのレビュー・感想・評価

3.8
【第33回アカデミー賞 主演男優賞他全3部門ノミネート】
『熱いトタン屋根の猫』リチャード・ブルックスがシンクレア・ルイスの同名小説を映画化した作品。アカデミー賞では作品賞、主演男優賞(バート・ランカスター)、助演女優賞(シャーリー・ジョーンズ)、脚色賞、作曲賞の5部門にノミネートされ、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞を受賞した。

口八丁のエルマー・ガントリーが不純な動機である宗教団体に入り、その演説でトップへ上り詰めるが…

面白かった。宗教ドラマではあるが、スペクタクルあり、人間の業を見事に描き出している。

エルマー・ガントリーの狂気、というよりもシスター・シャロンの狂気だった。シャーリー・ジョーンズは助演女優賞も納得の演技をみせていた。結局ガントリーを選ばず神を選んだ。上り詰めて誘惑に負けそうになるが神を信じた。その一途な愛=狂気である。

主演男優賞を受賞したバート・ランカスターも素晴らしい演技。口八丁で信徒を増やしていく様子をじっくりと見せていく。彼の演説シーンは特筆すべき狂ったシーンである。

宗教団体と金、私利私欲に負けていく様を内部から描いている。最近『タミー・フェイの瞳』というのがあったが、その原点とも言える。宗教組織が崩壊していく。

しかし、昔の映画ではあるのでキリスト教を狂信することを否定している訳ではない。異様なテンションで信徒を駆り立て集団ヒステリーのようになっていく様を下世話さをそこまで出さずに描いている。やはりこの頃のアメリカではこれが限界か。

ラストのスペクタクルな出来事は「神罰が下った」とも言えるし、信仰復興の息吹が垣間見える希望のシーンにも思える。

『熱いトタン屋根の猫』同様に温度の高い、というか湿度の高い演出に貫かれている。それがリチャード・ブルックスの得意とするところなのだろう。

過不足のない熱量がある演出が興味深く、バート・ランカスター、シャーリー・ジョーンズの熱演に圧倒される。宗教ドラマとしても出色の出来。配信になかったのでDVDを取り寄せて観たが、その価値はある力作になっている。
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