永遠の一瞬
1998年 北野武監督作品
『ソナチネ』と同じように、台詞の少なさ、独特の間、人物の心情をなぞる音楽が印象的。色は、海や空の青、暴力シーンでの血の赤と合わせて、雪の白も印象的だった。それと、作中のあらゆる場面に登場する花の色と北野監督の作品だという独特な色使いの絵。
『ソナチネ』と同じく“死”がテーマだったと思うが、“死”へのベクトルが180度違っていた。前作は、死からの逃避行。コミカルとシリアスの比重は、コミカルが勝っていた。本作の主人公の西は、妻と共に“死”に向かってゆく。死に場所を求める旅路と、覚悟を持つまでの心的プロセスが淡々と描かれる。コミカルさは少ない。
“死”を浮かび上がらせるための様々な対比が興味深かった。
堀部と西
生きる選択、死ぬ選択
妻との生き別れ、死に別れ
失った幸せ、叶わなかった幸せ
描くことによる再生、暴力による退廃
花と火
柔と剛
優しさと暴力
雪と光
生と死
「ありがとう」
「ごめんね…」
表意と真意
パッと咲き散る花火のような“死”、その瞬間の描き方は美しく見事だけれど、脇役たちの“死”に方が呆気なく、暴力描写がえげつない。その極端な対比もまた、美しい“死”を際立たせているのかもしれない。