ダイナ

HANA-BIのダイナのレビュー・感想・評価

HANA-BI(1997年製作の映画)
4.8
沖縄の開放感とは裏腹に閉塞感で充満していた過去監督作ソナチネ。やるせなさが増していき緩やかに絶望に包まれる本作はソナチネ感ありながらも、死だけでなく生についても強く印象付けてくるのが印象深いです。その点のキーパーソンとなる堀部を演じる大杉漣の演技力が素晴らしい。身体が不自由になり家庭も崩壊、仕事に心血注いでいた男が情熱を失ったその姿、無力感に打ちひしがれる西と重なるようで異なっているようにも映る対比構成が面白いです。ベレー帽の贈り物に見える優しさや準備〜強盗の平成クライム描写、要所で披露される「絵」の可愛らしさと禍々しさと不気味さ等、様々な感情を掻き立てられます。

病に蝕まれ確実な死に向かう妻、重傷により家庭崩壊してしまった同僚、身近に潜む絶望に浸った結果、何もかも捨てて妻との旅行へ。無心に追うヤクザと心配する同僚がそれを追跡する、なんとも空元気なロードムービー。仲睦まじい夫婦の様子は微笑ましくもありこの先に待ち受けるものに目を逸らしたくもなり。久石譲の音楽が哀愁と無情感を漂わせていて素晴らしい。もう何もかも素晴らしい!
ダイナ

ダイナ