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ルイジアナ物語のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ルイジアナ物語(1948年製作の映画)
4.5
【自然と人工のスペクタクル】
「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のロバート・J・フラハティ作品『ルイジアナ物語』を観た。ロバート・J・フラハティ監督といえば、『極北の怪異』で知られている。こちらは、北極で撮影したドキュメンタリーということもあり、確かに歴史上重要な作品である。しかし、映画のレベルで言ったら本作の方が何倍も凄い作品と言える。元々は石油会社のPR映画だったこともあり、環境破壊を告発する映画のように見えて妙に長閑な作風に仕上がっている歪さはあれども、それ差し引いても素晴らしい作品であった。

湿地帯を子どもが小舟で移動する。水は円形状に波打つ。その波はどこか粘り気があり、開けた場所になると無数の丘のように見える。とことん、水を美しく撮る手法にアッと口を広げていると、子どもがアライグマと戯れる。子どもにとっての遊び場ともいえる湿地帯の近くをボートが豪速球で通りかかり、子どもとアライグマは水中へと落ちる。子どもが銃を構えると、あり得ないような爆発が起こる。長閑な日常に忍び寄る企業の足音を象徴させるような場面が続く。

やがて、石油採掘の様子が映し出される。これが水と同じように官能的に、観る者の心を鷲掴みにするように描かれる。巨大なパイプにチェーンが巻き付いては離れを繰り広げる。見上げると巨大な金属による構造物が聳え立ち、水と石油を撒き散らしながら採掘が行われる。人間は汗水垂らしながら、エネルギーを抽出する。静なる自然と動なる人工が織りなすスペクタクルは、環境破壊に対する警鐘を鳴らしているようで、自然と人類との共存の方法を模索するような空間を作り上げており、奇妙な感覚を抱く作品に仕上がっていた。
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