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アンネの追憶のodyssのレビュー・感想・評価

アンネの追憶(2009年製作の映画)
3.0
【どこか物足りない】

『アンネの日記』で有名なアンネ・フランクとその家族、またその友人が、大戦中に収容所に入れられ、そこでどう過ごしていったかを描いています。言うならば、アンネのその後、ということでしょう。

で、面白くないわけではないのですが、映画として決定的な何かが欠けているように感じられました。

たしかに、収容所のアンネが分かるという意味では一見の価値があります。でもナチ時代の収容所の映画はこれまでいくつも作られていて、そういうものと明確に異なる独自性やウリがあるかというと、その辺が疑問。

また、作中のアンネはとにかく文章を書くことに固執するのですが、これがどの程度事実に基づいているかは分かりませんけれど、それはわれわれが持っているアンネ・イメージと違わないですね。つまり、この映画を見ることで従来のアンネ・イメージが覆されたり、意外な側面が分かるというところがないのです。悪い意味でオーソドックスなのです。

むしろ、アンネの家族がかくまわれていた家の女性が何とかアンネ一家を救おうと軍人とやりあうシーンなどにはとても魅力がありました。アンネの親しい友も、収容所に入れられながら生き延びて、戦後はイスラエルでたくさんの孫に囲まれて百歳まで生きたとのこと。これがナレーションではなく映像で示されていたら、さらに感動的だったと思うのですが。
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