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ミツバチのささやきのTPのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.2
★1987年に続き、2回目の鑑賞★

 宛先が明かされない手紙をしたためる母親、養蜂家だが学会らしきところにも出かける父という、言ってみれば子供目線的には何をやっているのかわからない大人の世界は曖昧に描かれるので、フランケンシュタイン絡みの件以外に明確なストーリーは特にはない。
 それでも絵画的な構図が非常に多い中で、場面場面、姉妹の表情は強烈に印象に残るし、子供の感覚、心情という観点からの詩情溢れる全く稀有な作品。

 公開当時から、撮影当時5歳で大きな瞳のアナ・トレントが人気を集めたが、私が初見時から感じていたのは、姉役のイサベル・テリュリアもまた、本作で重要な役割を担っていること。撮影当時7,8歳だと思うが、ときおり大人の色気さえ感じさせる表情や動作が、特にアナの純粋さと対比されることにより、なおさらアナの行動や純粋な行為に神秘性を加味させたと感じている。

 なお、初見時の評価は5だったが、今回は、物語としては物足りないというところはどうしても感じてしまい、評価は落とすことになる。
 この評価の相違は、今の私に35年前に感じることができた抒情性という尺度が、今の汚れた心の中で、もはや重要性が低くなったことの証左と考えられ、やや寂しいところは感じるのだが、今回は今回としての正直な点数としておく。
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