ヤンデル

ミツバチのささやきのヤンデルのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
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・この映画の背景としては、1940年ごろのスペインのフランコ政権下では書籍や映像作品に激しい言論弾圧があったので、一見子供向けの映画として制作し、圧政やそれに対する自由を暗に訴えている作品となっている。

・スペイン語の原題は「ミツバチの魂」となる。

・家族はそれぞれ当時のスペインのそれぞれの人々を象徴している

父…インテリで研究家だが、圧政に屈した人々
(蜂の研究をしながら手記を書いては消す)
母…昔のスペインを懐古しているだけの人々
(過去を振り返る手紙ばかり書いている)
イザベラ…政権の残酷性に慣れてしまった人々
(猫の首を締める、焚き火を飛んで越える)
アナ…純粋な気持ちで新しいスペインを想う人々
(人民戦線の人を助ける、3人とは違う自分を見いだす)

・父の手記では、蜂の巣はスペインであり、蜂たちは国民を表している。彼らの動きは常に監視されており、死ぬことも許されない、恐怖に怯えている。と、書いたところで自分で消す→検閲を恐れて自分で消していることを表している。

・アナが人民戦線の男を助けるシーンでは、男はキリストの姿になぞらえられており、アナがブドウ酒とパンを与えることもキリストを象徴している。

・フランコ政権下を悲惨さを表すものとしては、ピカソの「ゲルニカ」に表現されふ、反フランコ政権が多かったゲルニカという村をドイツ軍に爆撃させた事件がある。

・小学校の教育で人体解剖を教えるシーンでは、標本は体がバラバラになったスペイン国の人々を表しており、足りないもの=目=純粋にものを見ることをアナが補完する形で表現されている。

・アナが映画を観ているシーンは「フランケンシュタイン」(1931年の実在の映画)を実際に観ている子役を隠し撮りし、素直なリアクションを撮影している。

・アナは幼く、初めて映画を観たので、イザベラの「あれはお芝居なのでフランケンシュタインは生きている。彼は精霊。」とからかったのを純粋に信じてしまう。

・劇中に列車が出てくるのは、ルミエールの列車の到着人々は映画が本物だと勘違いしたことから、アナがフランケンシュタインの存在を信じてしまうことと重ね合わされている。

・ラストで「私はアナ」というのは、他の3人とは違い、純粋な気持ちで精霊=スペインの魂を信じ続けることを表している。

・ギレルモ・デル・トロの「パンズ・ラビリンス」はこの映画に影響され、戦時下で夢を持ち続ける少女を描いている。
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