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ミツバチのささやきのryo0587のレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
3.0
学生時代に早稲田松竹で観て以来の再見。15年ぶりくらい。有名なフランケンシュタインとの遭遇しか印象になかったので、ほぼ初見の印象に近い。

話としてはわかったような、わからないような、というのが本音(特にラストシーン)。
しかし丹念に積み上げられた描写が後々活きてくる構成の巧さ、その繊細さによって最後まで引き込まれる作品だった。

フランケンシュタインが下敷きになっているのは言わずもがな、ミツバチに関する洞察はそのまま自分達のいまの生活のアナロジーになっていたり、学校での授業が死んだふりをイザベルの心臓の音を確認するアナの行動に結びついていたりする。
アナが父から逃げて迷い込むのは森はおそらくイザベルと聞かされたキノコの園だろう。
自分が匿った脱走兵?が持っていた音がなるペンダントを父が持っていたことで彼に何かがあったと直感するアナ、そしてアナの視線から彼女の動揺を察する父親(このシーンは一切の言葉に頼らずに描き切っているのも良い)のシーンなどは特に秀逸。


ロングショットで挿しこまれる風景画のような画はこの作品をして抒情的と語らしめる最たる要素だが、何となく死を身近に感じさせて不安になる。
子供の視線から描かれる本作で、大人から隠されるこうした死は仄めかされる程度で、アナの目に直接触れることはないが、感受性豊かなアナはこの何となく目に触れない死を近くに感じ、鑑賞者は彼女と同じような不安・不安を共有する。

アナの両親の過去や関係など、見落としている要素はまだまだあると思う。そうした方が意味では都度新たな発見があり再見が楽しみな作品ではある。

何よりアナちゃん可愛い。透き通るような純真そのものの表情には感心する。
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