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ミツバチのささやきのSQURのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
5.0
舞台は1940年代のスペイン、だったのかな?道路も舗装されていないような田舎の街で、隣街という概念なんてないみたいで、街の外にはずーーーーと荒野が広がっている。日本だと田舎でも、村は山によって囲われているので、息苦しさがある一方で守られているような感覚にもなるが、この街はぽつんと世界にこの街だけがあるような印象だ。そこで生まれ育つ子供がどういう世界を認識していくのか、というある意味そういう映画ともいえるかもしれない。
主人公のアナは、小学校2年生か3年生くらいだろうか。毎日色んなことで揺れ動く激動の時代で、彼女はときどき大人の真似をして振舞って見せたりもするけど、ときどきはずっと幼くみえることもある。世界の捉え方の枠組みがまだ出来上がっていなくて、世界には得体の知れないまだ手付かずの部分が沢山残っている、といった感じ。カメラが、そういった未知の世界と触れ合う彼女の視点に迫ったり離れたりを繰り返していて、完全に客観的に子供の目線として捉えたり、完全に主観的に外部の存在しない目線として描くことのない、付かず離れずの間主観的な立ち位置を保っている。
画面はだいたい薄暗く陰湿だけれど、彼女はそれをただ恐れるのではなく、神秘や未知を求めて一歩踏み込んでいく。
冷たく、残酷で、美しい。
世界に裏切られそれでも世界に追いすがる彼女の祈りを描いたラストシーンがほんっっとうに綺麗で、悲しくて、ため息が出てしまいそうになる。
みんな子供のころは精霊に触れていたのだ。
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