たにたに

ミツバチのささやきのたにたにのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.0
【フランケンシュタイン】2023年80本目

町山さん解説付き鑑賞。

舞台は1940年のスペイン。
養蜂場を営む父、昔の恋人に返ってくるかもわからない手紙を書き続ける母、少し意地悪な姉、そしてその妹の主人公のアナ。

村で上映された「フランケンシュタイン」を鑑賞したアナは、ラストで死んでしまう女の子とフランケンシュタインに衝撃を受ける。
どうして死んでしまったのか?
人間のエゴで生まれたフランケンシュタインと、それに純粋な心で寄り添う女の子。
映画に映るものが本物だと信じてしまった幼きアナは、その疑問にとらわれることになる。
そんな折、廃屋に現れた脱走兵と出会ったアナは、彼をフランケンシュタインだと思い込み、林檎を差し出し優しく接する。



町山氏によると、この映画のタイトルともなっている"ミツバチ"はスペイン国民を意味し、そして"蜂の巣"がスペインを意味している。

撮影当時のスペインは、フランコ将軍による独裁政権が取られていた。政治批判映画に対する検閲が厳しい中、この映画にはその皮肉が込められているという。
それぞれの登場人物達の行動にも意味があり、父親はフランコ政権にすっかりと慣れてしまった諦めの表情を見せ、母親は過去を回顧する現実逃避の表情を見せる。
姉はフランコ政権下を当然のように受け入れ、むしろ染まってしまった物怖じしない行動をする。
しかし、アンは違う。
どこか不安げだし、どこか希望も持ち合わせ
ている。
だからこそ、アンの視点には非常に引き込まれてしまうのであろう。

悲しげな表情。
優しく微笑む表情。
意を決する表情。

死んだふりをした姉に意地悪されたと気づいた時の表情は凄まじい。
なんでそんなことするの?
すごい訴えかけてくる目だ。


難解な映画ですが、アンの成長物語として見事な作品に仕上がっている。
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