&y

ミツバチのささやきの&yのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.8
【2014/2/11:ユーロスペース】まさに映像詩と言える美しい画が魅力的で、観るたび新発見がある。今後も観続けたい作品。
キノコの件とかで政治的な背景も読めるけど、わたしはアナの成長譚として好き。
何度も観るうち自分なりの解釈がどんどん増え、ここには書ききれないですが…つまりこれって6歳のアナが生まれながらにして持ってる「本質を見抜く視点」に、アナ自身が気づいていく話なのかなと。
「まだ6歳だから現実や夢が交錯しちゃって云々」ではなく、彼女に見えているのは夢や現実や大人のルールや常識なんてもののもっと奥にある「本質」そのもの。そこには現実も虚構もない。みんな本当はそれが見えてたはずなのに、姉イザベルのように大人の世界に入っていく(血で口紅、が象徴的)うちに現実と虚構の境界や常識の範疇でものを見るようになる。成長や秩序とも言い換えられるかもしれない。大人の世界では「映画なんて嘘」だし「フランケンシュタインは悪者」に疑いの余地はない。
だから、アナと他者はいつもディスコミュニケーション。何かに接する時はいつも姉の視点を通すゆえ、いつもあらゆる「腑に落ちなさ」を感じてきたアナが、姉のいたずら等幾つかの事件を経て、姉や母とは異なる自らの視点を認め、尊重し、意思を持つようになる。
その「アナの覚醒」とも呼ぶべき起点からの脱走兵、りんご、時計や洋服の件はただただアナの混じりっ気ない優しさでありピュアネスであるから、平坦な言い方ではあるが感動する。
繰り返される「わたしはアナよ」という言葉。姉に教えられた呪文としての最初のこの言葉と、自らの意思を持ったラストのこの言葉では、意味合いも重さも全く違う。

ああ長くなった。もう一回観たらまた全然違うことを思うかもしれません。
「映画の缶詰」って素敵な表現だな。
&y

&y