ビクトル・エリセ監督の長編処女作で、隠喩に満ち、美しくもゆったりと時間の流れる眠たい映画。
9年後に作られた2作目『エル・スール』と同時に鑑賞したが、描かれる内容はほとんど同じで、そこにはフランコ政権下か否かという社会状況の違いが如実に反映されているのが興味深い。
共に少女の目を通して大人の世界が描かれ、そこには失われた別の人生や、家庭内ですら対立が生じたスペイン内戦の生々しい傷があり、過去と現在がつながる小道具として手紙が用いられる。
そして貫かれる映画への愛。
兎に角、それはずるいよ!と言いたくなる少女たちの可愛さと、荒涼としつつも美しいスペインの田舎の風景を、ロウソクの灯火の様なオレンジ色の光で写し撮った絵面・・・美しいの一言。魔法の様な瞬間が満ちている。
なんだけど、それって写真でも良くないか?と思ってしまうのも確か。
ユッタリとしたテンポ、検閲を逃れる為の隠喩的イメージ、動かない物語・・・美しい・・・美しいが、眠い。
寝不足で鑑賞したので何度も意識が飛んでしまったが、周りの客もあくびをかみ殺していたので、やっぱり眠かったのだろう。
エリセ監督の非凡な才能を感じるし、処女作ならではの作家を形作る要素が良く現れているんだろうなぁ・・・とは感じるのだが、99分は苦痛。30分だったら感動した。
美しいアート映画です。