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ミツバチのささやきのannのネタバレレビュー・内容・結末

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2024/3/13
言葉より映像と音がメインの作品だった。時代背景や風習など理解は浅いものの魅入られる作品だった。調べてみたところスペイン内戦が終結した直後のスペインの小さな村が舞台となっており、母、父ともに眠れない夜を過ごし不安な表情が多かった。姉は成熟する少女像で子供であるがゆえの残酷さも垣間見えた。口紅代わりに血を塗る姿、血を求めて猫の首を絞める姿、慣れた手つき、そして父親に妹の素行を告げている。ここは描写がないが、どうやって父親があの井戸の場所を見つけたのか、それしかないと思った。父親は3〜5発ほど発砲し、全て別々の場所に発砲していた。ただの銃を打ったのを分かりやすくする描写なのか、それとも父親の錯乱状態を表したものなのかは分からないが、列車から逃げるように身を投げ出し落下した足を負傷していた男はもしかしたら敵兵だったのかもしれない。だからこそ父親は取り乱したのかもしれない。さらにそこには自分の上着がある。だけど、そもそもあと男を殺し去っていった黒い洋服に包まれた男は父親であったのだろうか、また警官のような髭を整えていた男が持っていた時計は、足を負傷していた男の物と同じものではなかったのだろうか。どうして男は殺されたのか。まるでフランケンシュタインを見た妹と同じ気持ちにさせられた。彼女にとって妖精だった男が殺された。その上父親がその現場にいた。それは彼女にとってとても大きな出来事である。父親は毒キノコを潰したのだから。毒キノコを撫で、水辺で揺れる彼女の影がフランケンシュタインになり彼女はかの妖精と触れ合う。夜が明ければ彼女も目覚める。それは彼女が悪い子ではなく、いい子だったからであろうか。姉が妹を起こさず出ていくのは、妹のどんな顔を見たのか。どこへ行ったのか聞いたのに答えなかった妹に怒って父親に告げた可能性もありえる。ただ姉にとってはただのおふざけで自分が笑えば妹も笑って許してくれると思っていたのではないのか。もしかしたら亀裂が入ったのかもしれない。妹が答えなかったのは仲間はずれにされたから、そして妹には新しい友達が出来たから。最後犬の遠吠えに導かれ姉がふざけて倒れた窓を開ける。その時の音はなにか不吉なことが起こる時に流されるものだった。目をつぶり、彼女は自分の名前を告げた。振り返った彼女は光の射す方にいる。これで終わり。複雑な人間関係はなく最後まで純粋な話であった。しかしテーマは深く少女の視点で一緒に考えさせられる作品で、最後まで映像に惹き込まれるように綺麗だった。またみたい。
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