ソニア

ミツバチのささやきのソニアのネタバレレビュー・内容・結末

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ハートフルな話を想像してたけど思ったより芸術性の高い作品だったし、それにしては軽く観終えることができた。

フランケンシュタインの巡回上映を観た少女の中で揺れ動く死生観が語られる。といっても特に大きな展開は起きず、風景の綺麗さも相まってコンディション次第では寝てしまうかもしれない。

アナはとてもかわいらしく、それだけで満足感は得られるのだが、時代背景としてスペイン内戦のことを知っておくと、本作における監督のメッセージがわかりやすいかもしれない。

第二次世界大戦前夜の世界情勢として、共産主義VSファシズムの大きな構図があるが、スペイン内戦はこの構図を如実に反映している。スペインにおいてアサーニャが率いる人民戦線は共和派、共産党らによって組織され、土地の再分配を計画した。これにスペインの地主が怒り心頭、フランコ将軍を担ぎ上げ内戦に発展する。結果的にフランコが勝利し、以降1975年まで一党独裁は続く。

本作は1973年に公開とのことで、まだフランコによる独裁が行われていた時代である。(時代設定は1940年台)当時は政治的な映画は公開できなかったが、鬱屈とした感情を抱える表現者はどうにかバレないように政治的主張を作品に落とし込んだそうだ。
本作において、アナの家庭内の父母の対立や、周りから隔絶されたかのように佇む廃屋、これらはスペインを表している。また、アナとイザベルの性格も、当時のスペインにおける様々な立場の人たちを表しているそうだ。「なぜ殺してしまったの?」というアナの問いかけもなかなか効いてくる。

政治的主張を抜きにしてもこの映画におけるアナの演技や風景の西洋絵画的美しさは素晴らしく、この映画が時代を超えて愛されるのも納得である。

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