パリパリ海苔

ミツバチのささやきのパリパリ海苔のレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.5
映画における省略、編集と、絶対的な説明の不足。物語への疑義が生まれる。しかしそれが否定判断にはならずに、奇妙な無限判断へと落ち込んでいく。怪物と少女は殺されてなどいない。なぜなら、描かれている死は所詮、映画の中の出来事だから。したがって、彼らは生き続けている……。すると、疑念の対象であったところの虚構はその価値を一転させ、隠された真実という様相を呈することになる。隠された真実とは、端的に言えば死の秘密であって、ただ働き続けるだけの存在となったミツバチは死に触れることがない。そのとき、死とは視界の限界でしかない。しかし、われわれは映画を観ることによって、断片の集積を一本の線として受け取る。物語には絶対的な欠落がある。描き落とされた死は空白として、生の欠くべからざる条件として、現れる。そして、現実の単線的な時間も、映画と同じように編集により成立しているのならば、そこには語り落としがあるのではないかという、現実への疑念が生まれる。物語の真実あるいは死の秘密は、否定ではなく無限として、現実を侵食するのだ。そのことは、まだ働きはじめる前の、ミツバチの子供だけが知っている。
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