みんと

山猫のみんとのネタバレレビュー・内容・結末

山猫(1963年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

観た後に何度も美しさと切なさで涙が込み上げてしまうほどにカタルシスを感じる映画だった。


美しすぎる風景や城、出演者の佇まいと共に、貴族生活かのようにゆっくり流れる時間の中で、ゆっくりと、でも確実に迫ってくる新時代の風。それにより新たに台頭する軍人や品のない若い貴族達。そして、アランドロン演じる甥のタンクレディまでもが、新興ブルジョワジーの娘と共鳴し、無意識的にサリーナ公爵を裏切る。それらに対する失望、そして自分の老い…。
美しすぎる舞踏会のシーンでは、それらが一気に彼の孤独を加速させた。

舞踏会のシーンからラストまでは、本当に素晴らしかった。ヴィスコンティのこだわりぬいた美しすぎるセットや衣装。空虚さすら感じる貴族達の佇まい。そこに対照的に浮き彫りになる、サリーナ公爵の貴族としての圧倒的な威厳と、新時代に対する悲哀。このコントラストが苦しくて、美しくて…。
自分の時代の終わりを感じながらも、それまで長い時間をかけて築き上げた地位、名誉、思想、感性を、自らの滅亡という道を選択することで死守し、官能的な死を切望する彼の真の貴族としての美学。舞踏会終盤で涙を流したのは、「忘却される」という真意を、「官能的な死」の難しさを肌で初めて感じ取ったからだろうか。彼の美学に、旧時代・新時代、若者・老人という対比が生んだ、どうしようもない孤独と貴族としての高潔さや甘美すら感じた。
なんでだろう、ヴィスコンティとバート・ランカスターが表現する、老いによる孤独や時代からの孤立に毎度胸が苦しくなる。人間にとって「変化」とは「恐怖」そのものなのだと心底感じる。


Blu-rayについていた中条省平さんによる撮影秘話や、ヴィスコンティのこの作品における完璧主義っぷりを知った上で観ると、より世界観に陶酔しきれる3時間になると思う。

イタリアの歴史、貴族の歴史、そしてヴィスコンティについてもっともっと勉強しなきゃだな…。



(女性に一目ぼれしたり、叔父に嫉妬したりするアランドロンが最高にかっこよかったです笑)
みんと

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