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女ともだちのodyssのレビュー・感想・評価

女ともだち(1956年製作の映画)
3.5
【女たちそれぞれの生き方】

戦後10年くらいの時代の、イタリアの女たちを扱った映画。モノクロ画面ですが、映像はくっきりと魅力的で、また女優も美人揃いなのがいい。

一種の群像劇とも見ることができますが、主要な女性は3人です。ローマの服飾店勤務で、トリノに支店を出すためにやってきたクレリア、そのクレリアが宿泊したホテルの隣室で自殺未遂をしたロゼッタ、そしてそのロゼッタが恋する画家の妻であり自分も陶芸家であるネネ。

クレリアには仕事と女の生き方との葛藤が、ロゼッタには妻ある男に恋した女性の苦しさが、ネネには夫婦関係と芸術家との微妙な兼ね合いが表現されています。

特にロゼッタが恋する画家の妻であるネネには、微妙な女心があらわれていて秀逸です。彼女は陶芸で認められてNYで個展を開かないかと誘いを受ける。むろん、陶芸家としての彼女はOKしたい。しかし同時に、夫の画家が最近画業でうまくいっていないことを知っている。夫を差し置いて成功への道をひとりで歩んでいいのか悩む彼女。そこに、若い娘ロゼッタが夫に横恋慕する形で割り込んでくる。ネネは苦しみながらもロゼッタに夫を譲ろうかと一度は決心します。しかし、夫はいざとなるとロゼッタにすげない態度をとる。夫は芸術家としての悩みを受け止めてくれるのは、同じ芸術家である妻であり、単に愛する気持ちさえあれば十分と考える単純なロゼッタではダメだと分かっているのです。

というわけでロゼッタやネネの物語はなかなか見応えがあってよかったのですが、クレリアについては、途中まではよかったものの、最後のあたりがいかにもご都合主義、というか自分の都合しか考えず相手の気持ちは二の次三の次であるクレリアの欠点が露骨に出てしまって、しかもそれがラストなのですから、ちょっと問題ありの結末だなと首をひねりました。
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