genarowlands

春婦傳/春婦伝のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

春婦傳/春婦伝(1965年製作の映画)
3.7
鈴木清順監督が描いた日中戦争。反戦と位置付けているのだけれど、メロドラマ色が濃いぃです。舞台は砂漠に近い山西省。時おり砂嵐が襲う、雲崗石窟のある町。慰安婦ハルミ(野川由美子)と若い兵隊ミカミ(川地民生)の悲恋というより、兵士が逃げ腰で、ハルミの情念が凄まじい。それは激しい動きとストップモーションのカメラワーク、疾走感に表れています。

とにかく激しくパワフルなハルミ。ちょっと疲れてしまいました。

情念は弾より速く、砂塵より強く、奇跡がたびたび起こります。

集中力が切れたのは、ハルミを自分専用と思っている横柄な上官役の玉川伊佐男さんがどうしてもあの有名人にしか見えなくなり💦、ミカミ役の川地民生さんが「海底からきた女」の鱶女に一方的にアプローチされる役と重なってかわいそうになり、集中できなくなりました。

原作は朝鮮人慰安婦が題材の田村泰次郎の1947年の同名小説。GHQから発禁処分にされました。

1950年に池辺良主役で「暁の脱走」として映画化されましたが、GHQの検閲で朝鮮人慰安婦から日本人の慰問団の歌手(李香蘭が演じています)に変更させられています。

1965年の本作は日本人の恋人に捨てられて、自暴自棄になった日本人歌手が志願して慰安婦となる設定です。

若い兵士役ゲーリー・クーパーと酒場の歌手役のマレーネ・ディートリッヒの「モロッコ」(1930年)を思い出すシチュエーションでした。

野川由美子さんはとても美しいのですが、押しが強い演技で悲恋に見えず、李香蘭&池辺良の方がしっとりしていそうです。
genarowlands

genarowlands