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春婦傳/春婦伝のU子のレビュー・感想・評価

春婦傳/春婦伝(1965年製作の映画)
3.6
あらすじに惹かれて、鑑賞。
とても好きなタイプの作品だろうなと思ったら、なんか私はそこまで好きになれなかった。
中国にいる日本兵三上と娼婦春美の話。
春美はある副官を憎く思ってるも、
拒否することはできない。
三上は春美を汚いものを見るように冷たく見る。
しかしその冷たい視線に惹かれて、
春美は三上を愛し始める。いつのまにか
堅物な三上も春美のことを思い始める。

真面目であるが故、最後まで戦闘していたら、捕虜になってしまった三上。
その三上を爆弾の雨の中助けに行く春美。
ここのシーンはいいな。

三上に逃げようと春美は提案する。
手榴弾を持ってきてくれたら逃げると三上は言う。その通り持ってきたら、三上は自決する覚悟だった。一人死なせまいと絡みつく春美。二人は一緒に死んでしまう。

結局、副官の言うことに抗えなかったように、逃げることはせず二人とも死を選んだ。
捕虜になるなら、死んだことにして、
殺そうとする日本軍。
命よりも、恥や名誉が上に行く。
死んだ二人は潔いのかもしれないが、
生きてほしかった。
どんなに不名誉でも。

私があまり、この作品にはまれなかったのも
そういうところもあるが、
春美がやたらとヒステリックに叫ぶのが
なんかしんどかった。
中国で兵隊の相手をすることなど
尋常な神経ではできないのだろうが、
なんかリアルに感じれなかった。


私が好きなのは清作の妻みたいなのだ。
夫が戦争に行くのを止めるため、
目をつぶす妻。
それを最初は責めた夫も、
結局は受け入れ、村八分にされても
二人で生きていく。
社会性より二人の関係性を取る生き方。

21歳の野川由美子は美しくて魅力的だった。
撮り方もスローモーションだったり、
静止画だったり実験的なところもあって
そういうのは面白い。
二人で逃げて生きていくなんて現実的ではなく、心中する方がリアルなのかもしれない。
でも清順がよく人生は一度だから狂えって言ってたみたいに、どこまでも二人で逃げてほしかったな。
U子

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