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十戒のhasseのレビュー・感想・評価

十戒(1956年製作の映画)
3.4
演出4
演技3
脚本3
撮影3
音楽4
技術4
好み3
インスピレーション3

セシル・B・デミル監督の遺作。長尺歴史スペクタクルの金字塔として並び立つ『ベン・ハー』と同じくチャールトン・へストン主演。『ベン・ハー』ではへストンはずっとストロングなへストンであり続けるのだが、こちらはへストンが徐徐に泥まみれになり、髭もじゃになり、白髪が増え、宗教的指導者へと変貌を遂げていき、もはやへストンの面影がなくなっていく。後半は替え玉が演じてましたと言われても驚かないだろう。

この映画で監督は何を撮りたかったのか? 別にモーゼの十戒を持ち出して世にモラルを問うたり、宗教心を高揚させたいわけではなく、莫大な金をかけて豪華絢爛な衣裳や小道具、無数の人間に満ち溢れたスペクタクルを撮りたかったのか。ハリウッド黄金期の晩年に相応しい、最期の一花を咲かせた作品。21世紀の今、CGでいくらでも派手な史劇は撮れるが、この映画が一切のCGなしで撮られていると思うと、凄まじい気迫を感じる。

どの会話シーンもカメラワークが似たり寄ったりなのと、ストーリーも旧約聖書をなぞるばかりでやや退屈だが、エジプトの王宮シーンの金銀と目の覚めるようなブルーのきらびやかさ、出エジプトの瞬間の人や家畜の移動の圧倒的な映像は素晴らしい。
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